糖尿病の薬の種類と特徴——自分の薬を理解しよう
糖尿病と診断されて薬を処方されたものの、「この薬は何のために飲むのか」「副作用は大丈夫なのか」と不安に思う人は多い。医師から説明を受けても、専門用語が多くて頭に入らないこともある。
この記事では、2型糖尿病で使われる主な飲み薬と注射薬について、それぞれの特徴、効き方、注意点を分かりやすく解説する。自分が飲んでいる薬がどういうものか、理解する手助けになれば幸いだ。
糖尿病の薬は大きく分けて3タイプ
糖尿病の薬は、効き方によって大きく3つのタイプに分けられる。
- インスリンの分泌を促す薬——膵臓を刺激してインスリンを出させる
- インスリンの効きを良くする薬——インスリン抵抗性を改善する
- 糖の吸収・排泄を調整する薬——食事からの糖の吸収を遅らせたり、尿から糖を出したりする
どのタイプの薬を使うかは、その人の糖尿病のタイプ、血糖値の状態、肥満の有無、腎臓や肝臓の機能、他の病気の有無、生活スタイルなどを総合的に判断して決められる。最近は複数の薬を組み合わせることも多い。
主な飲み薬の種類と特徴
ビグアナイド薬(メトホルミン)
代表的な薬:メトグルコ、グリコラン、メトホルミン(ジェネリック)
効き方:肝臓で糖が作られるのを抑え、筋肉での糖の利用を促進する。インスリンの効きを良くする薬だ。膵臓を刺激してインスリンを出させるわけではないので、膵臓への負担は少ない。
特徴:
- 低血糖を起こしにくい
- 体重が増えにくい(むしろ減ることもある)
- 値段が安い(ジェネリックもある)
- 世界中で最も多く使われている糖尿病薬で、第一選択薬とされることが多い
- 心血管疾患を予防する効果も報告されている
注意点:
- 下痢、吐き気、腹痛などの胃腸症状が出ることがある(少量から始めて徐々に増やすと軽減できる)
- 腎機能が悪い人(eGFR 30未満)には使えない
- 造影剤を使う検査(CT、カテーテル検査など)の前後は休薬が必要
- 大量の飲酒は乳酸アシドーシスのリスクを高める
- ビタミンB12が不足することがあるので、長期服用者は定期的に検査を
SU薬(スルホニル尿素薬)
代表的な薬:アマリール(グリメピリド)、グリミクロン(グリクラジド)、オイグルコン/ダオニール(グリベンクラミド)
効き方:膵臓のβ細胞を直接刺激して、インスリンの分泌を促す。血糖値に関係なくインスリンを出させるので、効果は強いが低血糖のリスクもある。
特徴:
- 血糖値を下げる力が強い
- 昔からある薬で、使用実績が豊富
- 値段が安い
注意点:
- 低血糖を起こしやすい(特に高齢者、食事量が少ない人、腎機能が低下している人)
- 体重が増えやすい
- 効果が長く続くため、夜間〜早朝の低血糖に注意
- 長期間使うと膵臓が疲弊して効きが悪くなることがある(二次無効)
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
代表的な薬:シュアポスト(レパグリニド)、グルファスト(ミチグリニド)、スターシス/ファスティック(ナテグリニド)
効き方:SU薬と同じく膵臓を刺激するが、効き始めが早く(飲んで30分以内)、効果の持続時間が短い(2〜3時間)。食事に合わせて使う薬だ。
特徴:
- 食後の血糖値上昇を抑えるのに向いている
- 食事の直前(5〜10分前)に飲む
- SU薬より低血糖リスクは低め
- 食事をしないときは飲まない
注意点:
- 毎食前に飲む必要があるので、飲み忘れに注意
- 食事を抜いたときは薬も抜く
- 食後に飲んでも効果は薄い
DPP-4阻害薬
代表的な薬:ジャヌビア/グラクティブ(シタグリプチン)、エクア(ビルダグリプチン)、ネシーナ(アログリプチン)、トラゼンタ(リナグリプチン)、テネリア(テネリグリプチン)、マリゼブ(オマリグリプチン・週1回)
効き方:インクレチンというホルモン(GLP-1など)の分解を防ぐ。インクレチンは「血糖値が高いときだけ」インスリン分泌を促すので、低血糖を起こしにくい。食事をすると分泌されるホルモンなので、食事を抜いたときは効果も弱まる。
特徴:
- 低血糖を起こしにくい
- 体重への影響が少ない
- 1日1回の服用でOK(週1回タイプもある)
- 副作用が少なく、使いやすい
- 高齢者にも使いやすい
注意点:
- SU薬と併用すると低血糖リスクが上がる(SU薬を減量することが多い)
- 単独では血糖降下作用はマイルド
- 膵炎の既往がある人は注意
SGLT2阻害薬
代表的な薬:フォシーガ(ダパグリフロジン)、ジャディアンス(エンパグリフロジン)、カナグル(カナグリフロジン)、スーグラ(イプラグリフロジン)、ルセフィ(ルセオグリフロジン)、デベルザ(トホグリフロジン)
効き方:腎臓の尿細管で糖が再吸収されるのを防ぎ、尿と一緒に糖を体外に排出する。1日に約70〜100gの糖(約300〜400kcal分)が尿として出ていく。
特徴:
- 低血糖を起こしにくい
- 体重減少効果がある(2〜4kg減ることも)
- 血圧を下げる効果もある
- 心不全や慢性腎臓病の進行を抑える効果が証明されている
- 糖尿病がなくても心不全・腎臓病の治療薬として使われるようになった
注意点:
- 尿路感染症、性器カンジダ症(特に女性)のリスクが上がる
- 脱水に注意(水分を1日1.5〜2リットル摂る)
- 頻尿になる(特に飲み始め)
- シックデイ(体調不良時)は休薬が必要な場合がある(ケトアシドーシス予防)
- 高齢者や利尿薬を使っている人は脱水に特に注意
αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
代表的な薬:ベイスン(ボグリボース)、グルコバイ(アカルボース)、セイブル(ミグリトール)
効き方:小腸で炭水化物を分解する酵素の働きを抑え、糖質の吸収を遅らせる。血糖値の急上昇を防ぐ。
特徴:
- 食後血糖値の急上昇を抑える
- 低血糖を起こしにくい
- 食事の直前(食べ始める直前か、最初の一口と一緒に)に飲む
注意点:
- おなら、腹部膨満感、下痢などの副作用が出やすい(未消化の糖質が大腸で発酵するため)
- 低血糖時はブドウ糖で対処する(砂糖は分解・吸収が遅れるため効きにくい)——これは重要!
- 食後に飲んでも効果がない
チアゾリジン薬
代表的な薬:アクトス(ピオグリタゾン)
効き方:脂肪細胞に働きかけて、インスリンの効きを良くする(インスリン抵抗性を改善)。効果が出るまで2〜4週間かかる。
特徴:
- 低血糖を起こしにくい
- インスリン抵抗性が強い人(肥満、内臓脂肪が多い人)に向いている
- 脂肪肝の改善効果も報告されている
注意点:
- むくみが出やすい(体重が増えたように見える)
- 体重が増えやすい(脂肪細胞が増える)
- 心不全のある人、心不全の既往がある人には使えない
- 骨折リスクが上がる可能性(特に女性)
- 膀胱がんのリスクについて議論がある(長期使用者)
注射薬の種類
GLP-1受容体作動薬
代表的な薬:ビクトーザ(リラグルチド)、トルリシティ(デュラグルチド)、オゼンピック(セマグルチド注射)、リベルサス(セマグルチド経口)、マンジャロ(チルゼパチド・GIP/GLP-1)
効き方:インクレチンホルモン(GLP-1)と同じ働きをして、血糖値が高いときにインスリン分泌を促す。また、食欲を抑える効果、胃の動きを遅くする効果もある。
特徴:
- 低血糖を起こしにくい
- 体重減少効果が大きい(5〜10%減も珍しくない)
- 週1回の注射でOKのものもある(トルリシティ、オゼンピック)
- リベルサスは飲み薬タイプ(朝空腹時に水で飲む)
- 心血管疾患の予防効果が証明されている
注意点:
- 吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状が出ることがある(少量から始めて徐々に増やす)
- 値段が高い
- 注射に抵抗がある人には向かない(リベルサス以外)
- 膵炎の既往がある人は注意
- 甲状腺髄様がんの家族歴がある人には使えない
インスリン製剤
膵臓からインスリンがほとんど出なくなった人、飲み薬だけでは血糖コントロールができない人に使われる。1型糖尿病では必須。2型糖尿病でも、進行すると必要になることがある。
種類:
- 超速効型(ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラ、フィアスプ、ルムジェブ)——食直前〜食後15分以内に打つ
- 速効型(ヒューマリンR、ノボリンR)——食前30分に打つ(最近はあまり使わない)
- 中間型(ヒューマリンN、ノボリンN)——効果が10〜16時間続く
- 持効型(ランタス、トレシーバ、レベミル)——1日1回、24時間効く基礎インスリン
- 混合型——超速効型と中間型を混ぜたもの(ノボラピッドミックス、ヒューマログミックスなど)
インスリン療法は「最後の手段」ではない。早期に始めることで膵臓を休ませ、将来的にインスリンを減らせることもある。
薬を飲むときの注意点
自己判断で薬をやめない・減らさない
「血糖値が良くなったから」「副作用が気になるから」と自己判断で薬をやめるのは危険だ。血糖値が良くなったのは薬が効いているからであり、やめれば元に戻る。必ず主治医に相談してから。
飲み忘れたときの対応を確認しておく
薬によって「気づいたときに飲む」「次の回から飲む」「2回分まとめて飲まない」など対応が違う。処方時に確認しておこう。お薬手帳やスマホのメモに書いておくと安心だ。
他の薬やサプリとの飲み合わせ
市販薬やサプリメントを飲む前に、糖尿病の薬との相互作用がないか薬剤師に確認しよう。特に風邪薬、胃腸薬、痛み止めなどは影響があることがある。
シックデイの対応
体調が悪くて食事が摂れないとき、薬をどうするか事前に主治医と決めておく。特にSGLT2阻害薬は体調不良時に休薬が必要なことがある。SU薬も食事量に応じて減量が必要なことがある。
まとめ
糖尿病の薬は種類が多く、それぞれ特徴が違う。大事なのは、自分が飲んでいる薬がどういうものか理解しておくことだ。
- 低血糖を起こしやすい薬か、起こしにくい薬か
- 食前に飲むのか、食後でいいのか、食事と関係なく飲めるのか
- どんな副作用があるのか
- 飲み忘れたときはどうするか
- 他の薬との飲み合わせは大丈夫か
これらを把握しておけば、安心して治療を続けられる。分からないことがあれば、遠慮せず主治医や薬剤師に質問しよう。薬は正しく使えば、糖尿病とうまく付き合っていくための強い味方になる。